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エネルギー効率    2015(#18)


「エネルギー効率」とは、それだけではあまりにもあいまいな言葉であり、普通は、小さな範囲に限定されたひとつの技術を、それが属する学会や業界で確実に受け入れられている方言/条件/約束事をもって表現あるいは比較するために使われている。したがって、技術をまたいでのエネルギー効率の比較は簡単ではない。「総合効率」という言葉も当然だが双方の定義を確認しないままに受け入れることはできないのだ。

たとえば以下のような値や要素をどう扱うか、これを定義することがまずは必要になるだろう。
・実現してはいるが規模や商業性、再現性の面で十分な展望が無い数字(核融合、量子ドット、超電導などを用いる技術)
・現有技術では全部使おうと思っても一度には使えず残ってしまう入力(反射光、未燃焼ガスなど)
・目的のエネルギーに変換されていても想定する用途には使えない出力(熱、異なる化学物質など)
・入力が持っている熱量(核燃料)

次の表にある値を掲載するWebサイトでは、これらの摩擦でできてしまったささくれをできるだけうまく削りとり、あくまで現状の「商業ベース」において比較してみようという試みがなされている。しかしそれでも、値の信憑性、条件と値との整合性、特殊な用途で製品になった数字、など、残る問題にも難しいものがあるようだ。日本語/ドイツ語/英語の同じWebサイトを比較すると、数値や条件の違いなどにそれら苦心の痕跡が見えてくる。
蛇足だが、実験室レベルの効率や理論効率も値としては当然に重要で、別途正しく比較されなければならない。その値は期待とともに投資という投票行動を起こし、結果がどうあれ未来の産業と社会を活性化する原動力でもあるからだ。

⇒ Wirkungsgrad


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AP1000(3)    2014(#20)


"AP1000(2)" より続く

少し前になるが、東日本大震災の年2011年12月1日、東芝は、AP1000向け復水器の出荷を開始している。
  ・設計/技術/品質管理: 東芝
  ・製造外注: 韓国BHI
  ・納入先: ボーグル原子力発電所 @ジョージア電力(サザン電力子会社)

ウエスチングハウスは1999年に経営破綻し、原子力部門がウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー(ペンシルバニア州、9000人、20億ドル)として残る。さらに2006年、東芝は、54億ドルで本社米国のまま(経営体制を独立経営に保留)これを買収、つまり融資を行った。2020年の9000億円(累計100基以上)はAP1000を中心に据えた東日本大震災前の見込みだが、彼らは自分の家族より外側の滅多な事でヘコんだりはしない。空からただ降ってきた54億ドルを糧にしらっと計画通りに進めてしまうことだろう。

一方のGEは、これまでどおりBWRで日立と提携している。
2006年に日米両国に設立された新会社は、
(日本)日立GEニュークリア・エナジー:日立80%、GE20%
(米国)GE日立ニュークリア・エナジー:日立40%、GE60%
である。この一見左右対称なたすきがけも、実態は新型炉ESBWRの世界展開に向けた日本への辞令のようなものなのだろう。


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AP1000(2)    2014(#19)


"AP1000(1)" より続く

商用発電向第3世代原子炉は、1980年台後半から、"passive safety"、"simplified systems" を主なコンセプトに設計されてきた。PWRではウエスチングハウスのAP600がそれにあたる。AP1000は、そのAP600を元に、さらに経費節減要素と出力とを最適化して経済性をデザインした第3+世代(*1)のPWRである(BWRではESBWRが同世代とされている)。AP1000ではCDF(Core Damage Frequency)が最大で 2.41E-7/Reactor/Year となるような設計が施されていると言う(同社)。特に東日本大震災より、この値は過去から未来への写像として再整備され、一定の力を持ちはじめた。

「絶対安全だ」「とても危険だ」などというみっともない口喧嘩をできるだけ避けて原発を比較/評価するため、Probabilistic risk assessment という考え方が用いられる。その中で、CDFは1基の原子炉が1年間で炉心損傷に至る事故を起こす確率(/Reactor/Year)であり、逆数を1件の事故が起こるまでの延べ稼働年数(Reactors*Years)と言うこともできる。世界では60年間で約600の発電用原子炉が建設されており、これらの延べ稼働年数は15,000(Reactors*Years)程度である。これまでに炉心が損傷するに至った原発事故は合計6件(損傷が軽微で修理再稼働したものを入れると11件)、したがって実績としては2,500(Reactors*Years)に1件の割合で炉心損傷事故が起こったことになる。CDFは4e-4(/Reactor/Year)。

さて、福島第一発電所では、GEのBWR-3とBWR-4がMark-1コンテナの中で使用されていた。そのCDFは1e-4から1e-7という従前の評価であった。今回米国は、この事故(現象)を要素ごとに細かく分解/分析することによって、普通であれば得る事ができなかった極めて重要な多くのデータを獲得したと考えられる。それは、すでに"Specialized Seismic Option"という特別な論を枠外に組み立てつつあるウエスチングハウスのアクティブな防御姿勢にも、これを機にCDF値の条件と妥当性を一気に固めてしまおうとするGEの前屈みな体勢にも、同じように現れている。

もともと最強のチャンピオンが、費用は相手持ちで、レフェリーを兼務しながら、日本や途上国のイノセントマンたちを自在にコントロールする(*2)、それこそ「絶対安全」な商売だ。

"AP1000(3)" に続く






*1)
一方、熱中性子炉(TR)/高速炉(FR)とも、第4世代原子炉の開発は総じてひところの勢いを失ったかのように報じられることが多い。
しかし実際には、例えば受動的安全性の面で最近世界の注目を集めている高温ガス炉(HTR:現在は実証炉の段階)のあるロードマップには、第4世代である超高温ガス炉(VHTR)/ガス冷却高速炉(GFR)が加わった。日本でも、「意図的?」とさえ思わせるほどのもんじゅのやけっぱちな振舞いは、実はその第4世代原子炉の開発に向けてのポイント工事に見えなくない。堂々巡りのままずっと目の前を漂っている核燃料サイクルの問題を絡めとることができるのならば、今こそがその好機と言えるのだ。

*2)
これは多くの産業で見られる日米協業の構図であって、日本人または日本企業にとっての問題を2つ抱えている。
ひとつは、では我々はこれをリードできるのか、という問いである。有り体に言えば、米国がその地力をもって生み出したものと同じレベルの枠組みを日本国内でも造り上げることができるのか、今はまだ受け入れる側に回るほうが良いのでは、という自己評価のことだ。
→ "産業2015-b"
→ "関係と帰納"
もうひとつは我々の内にある。いま縁側で静かにお茶をすすっている爺さんと横でスヤスヤ眠っている赤ん坊の毛布を剥ぎ取らないままで、自分にも子供たちの未来にも幸福をもたらす「産業」「労働」とはいったい何なのか、という問いである。すなわちそれは、刹那の高ぶった思いでも逆に思想や倫理でもなく、「ほどほど」の時間的/地域的スパンから得られる現実的な解でなければならないのだ。
→ "共産党宣言"
また、ここで一点注意しておきたい。原発か太陽光発電かというデスマッチ的な選択問題や、金も権力も持っている連中への妬みのような感情がもしこれに絡んでくるのであれば、上のような論は全く意味をなさなくなるのである。
→ "傲慢"


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AP1000(1)    2014(#18)


ウエスチングハウスは、"Specialized Seismic Option" という名で、地震災害レベルの高い地域でAP1000を使用する場合の特別な技術を現在開発していることを発表した。同技術についてNRCへの認可申請を開始したことも伝えている。適用される地域の例としてはアメリカ西海岸をあげている。このオプションは、安全性、モジュラーデザイン、システムの簡潔性という点で、通常のAP1000と同じ特徴を確保するとしている。発表の中にはオプション選択のガイドライン要旨が挿しこまれているが、これは現行AP1000事業を計画通り進めるために練り上げ固められたスタンスだ。
「AP1000は現在世界で8基が建設中で他にも計画が進行中だが、これらを含めほとんどの場合には通常のAP1000が使われるだろう。そのようなマーケットに "Specialized Seismic Option" は必要無い。」
この一文は、AP1000を現在建設中の地域とその関係者だけでなく、日本の反原発派とPWRユーザに対しても影響を与えた。


Westinghouse Electric Company LLC today announced that it is developing a specialized option of its AP1000® nuclear power plant for use in locations with higher seismic levels seen in some portions of the western United States and certain other countries. Westinghouse began the process of obtaining U.S. Nuclear Regulatory Commission (NRC) review and approval of the “Specialized Seismic Option” at a June 25 pre-submittal meeting at the agency’s headquarters.

“With eight units under construction worldwide and more planned, the AP1000 plant is the leader in advanced nuclear energy technology. In addition, customers in more active seismic environments have expressed a strong interest in incorporating this Westinghouse technology into their energy portfolios,” said Jeff Benjamin, Westinghouse senior vice president, Nuclear Power Plants.

Westinghouse and its majority owner Toshiba Corporation are working collaboratively on a limited number of customized materials and/or reinforcements that will allow new units to be built in areas that have a higher seismic spectrum. This Specialized Seismic Option will provide the same advanced safety features, modular design and simplified systems as the AP1000 plant technology.

Most of the new opportunities that Westinghouse pursues worldwide will continue to use the standard AP1000 plant because it is most appropriate for the great majority of global sites – including the sites where AP1000 units currently are under construction. The specialized option is unnecessary in such markets. Benjamin said that offering the specialized option in areas with different seismic characteristics will open new markets to the company.

“Development of the Specialized Seismic Option will broaden the AP1000 new-plant market and facilitate the growth of the AP1000 global fleet,” Benjamin said. “It represents a new opportunity to bring the unsurpassed safety, environmental and economic benefits of our technology to more people worldwide.”

Pittsburgh, Pa. (PRWEB) June 26, 2014   https://www.prweb.com/



→ "AP1000(2)" に続く


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大飯原発判決要旨(2)    2014(#17)


"大飯原発判決要旨(1)" より続く

8 原告らのその余の主張について

原告らは、上記各諸点に加え、高レベル核廃棄物の処分先が決まっておらず、同廃棄物の危険性が極めて高い上、その危険性が消えるまでに数万年もの年月を要することからすると、この処分の問題が将来の世代に重いつけを負わせることを差止めの理由としている。幾世代にもわたる後の人々に対する我々世代の責任という道義的にはこれ以上ない重い問題について、現在の国民の法的権利に基づく差止訴訟を担当する裁判所に、この問題を判断する資格が与えられているかについては疑問があるが、


9 被告のその余の主張について

 他方、被告は本件原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。

 また、被告は、原子力発電所の稼動がCO2排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。

これは、あまりにも「自己マンな判決要旨」として今回有名になってしまった部分である。「国富」という勇み足を含め、いまバラエティー番組から新聞までそこここで論じられているテーマをとりあげただけの、被告/原告双方にとってはまるで意味の無い評論に過ぎない。いったいなぜこんなところに出てきてしまったのだろう。

どこの国の司法でも、国民の感情に重大な影響を及ぼずだろう判決に関して一定の忖度が実際に存在することは間違いない。ただ21世紀の司法はその限度をなくしてしまったように思えてならない。「社会とこんなに隔絶されてしまった司法」などと攻撃されることに対し、彼らは必要以上に敏感になっているのだろうか。それは我々市民が糾弾すべき類の歪みではないかもしれないが、ただ、思想や文化あるいは個人と社会との間に内在する契約にまで司法を持ち込もうとするこのような傾向は、特にネットを騒動の中心としたこのところの「国民オール法律家/評論家現象」にある典型的なダークサイドでもある。司法がこれに巻き込まれることなど誰も望んではいないという事を、衡平の秤のもと、皆様にはぜひお忘れなくいただきたい。


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大飯原発判決要旨(1)    2014(#16)


「大飯原発3、4号機運転差止請求事件判決要旨」は、おおまかには、想定している地震の規模が小さすぎるので認めない、その他の議論はこの判決に無関係である、と言っている。その中の「理由の5」では、代表するふたつの論が述べられている。

現に、全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来しているという事実を重視すべきは当然である。

事実によって否定されてしまった論理をこれまで供出し続けてきた機関に、そもそも「科学的な立証」を行う資格などないと、残念ながらこれはこの文の結びにあるとおりまさしく「当然である」と言わざるをえないだろう。

我が国において記録された既往最大の震度は岩手宮城内陸地震における4022ガルであり、1260ガルという数値はこれをはるかに下回るものである。

前提となっている1260ガル以下という想定には条件が多過ぎて、しかもピンポイントで、これはいくらなんでも低すぎるのでは、という評価だ。(裁判所の「評価」とは一体何なんだと思うがそれはまた別の問題だ。) そもそもこの1260という数字は、専門ではない一般人の体感では言語道断/低すぎると見られても、かたや専門家が科学的根拠と言葉の定義を正しく用いれば妥当、という類のよくある値である。しかし今回の判決は、専門家が「科学的根拠に基づいて許される」とする論理も、一般人の体感が言う「言語道断」に比べて、いつも優れているわけでは決してない、よく見てみろ、と言っているのだ。実際、昨年からの再稼働申請に関わる資料を読んでみるとその理由がよくわかる。
・とされている
・の仮定において
・明確な
・充分な
・すべきと考える
などという不定形で感覚的、または評論型の表現があまりにも多いのである。同じ口で一般人のボンヤリとした体感を切り捨てることなどとてもできないだろう。 したがって組み立てられたイベントツリーや対策には何の意味もないと、判決の論旨は蓋しもっともで、一連の裁判が導いた結論にはほとんどの人が納得できるに違いない。

さてしかし、なのである。この流れの中に被告の何か作為的なものを感じている人はいないだろうか。それはあまりにも不自然に単調かつ幼稚であった被告の言い分だ。いまここで再稼働する意思などもともとなかったのではないかと、むしろそういう強い匂いが残るのだ。もしや「大飯を犠牲に高浜を動かそうとしている」のか、あるいは「大飯の判決を言質に泊から川内までPWR再稼働のガイドラインを確立しようとしている」のではないか。もしかしたらこれは、今どうしても日本経済の一部を背負わなければならない当の現場での、わざと外に聞こえるくらいの声で話す「内緒話」なのではないだろうか。
 
→ "大飯原発判決要旨(2)" に続く


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三菱重工長崎造船所    2014(#13)


"リチウムイオン電池産業" より続く

ちょうどその規模を実感させるのが、その三菱重工長崎造船所だ。先のリチウムイオン電池年間国内合計3000億円と、括弧内の三菱重工年間と比較してみる。
・自動車運搬船、コンテナ船、護衛艦、LNG船、LPG船、大型タンカー【船舶/海洋3000億円】
・タービン(年間生産能力400万kW)、ボイラ(年間生産能力600万kW)【原動機1兆円】
・人工衛星用の機器や太陽電池、防衛機器【防衛/宇宙3000億円】

この工場群を初めて訪れたならば、電機や半導体などに一生をささげる自称「技術者」は例外なく腰を抜かし、「IT」や「ソリューション」で飯を食っている横文字「エンジニア」は顔を隠してスタコラサッサと東京へ逃げ帰る。

→ "太陽電池" に続く


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リチウムイオン電池産業    2014(#12)


米テスラがパナソニックと共同で推進する「Gigafactory」プロジェクトの目標生産量は年間3千5百万kWh(総事業費4000-5000億円)、これは現在の世界年間生産量に迫る規模である。

リチウムイオン電池の世界生産は年間5千万kWh、1.5兆円。
日本国内はその1/5ほどで年間1千万kWh *2)、3000億円 *1)。

リチウムイオン電池の1千万kWh(3000億円)という国内年間生産は、二重三重に産業が乗っかる器としては決して大きくない。例えば液晶産業は、独り立ちし経済を牽引するためには国内で2〜3兆円規模の生産が必要と言われていた。その点でリチウムイオン電池はまだあくまで部品でしかなく、そのマザープロダクトである「自動車」、「スマホ」、「電気」や「電機」に未だ乗っかっているだけであることを忘れてはならない。
最近売却の噂が出ている三菱重工長崎造船所内のリチウムイオン電池工場(投資額100億円)にしても、年間生産量6万kWh(国内比でも0.6%)という、サンプル出荷を主眼としたパイロットラインの規模である。末席に参加してはいたがここで量試を一旦手仕舞いして様子をうかがおうという、それ以上のニュースではないだろう。

これまでは日産自動車「リーフ」の販売台数が目標の1/10であることになんとなく責任を押し付けてきた我々だが、ほんとうのところリチウムイオン電池の浮沈とその時期は米国のエネルギー/環境政策に握られていると言ってよい。そしてそのようなニュースでまた、来年こそ2倍になる、数年後には桁が変わる、とオーバーヒートしなければならないのは、海のこちら側にいるわたしたちなのである。






*1)
生産高やGDPでなく別の方向から国内を見ると、
分野別の国内年間売上高は、
・建設全体で90兆円
・電気機器全体で50兆円(液晶テレビ1兆円)
・輸送機械全体で40兆円(自動車20兆円)
・鉄鋼全体で20兆円
(ちなみにGDPは500兆円で政府一般会計は100兆円)。

*2)
国内年間生産量は鉛蓄電池とリチウムイオン電池が同程度(ニッケル水素電池はその1/10)。
日本国内の年間総電力消費量は1兆kWh(8時間で10億kWh)であり、この世界と同じ定義の言葉をもって語ることはまだ許されていない。

→ "三菱重工長崎造船所" に続く


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