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インダストリー4.0    2015(#20)


ドイツではインダストリー4.0と呼ばれているこの考え方だが、「なんだまたかよ」と斜めに見ている人も少なくないだろう。しかしそれがどんなものであれ、産業の芽になるのであればと、新しい「呼び名」に社会が期待するのはあたりまえのことである。他のいくつかの国々でも似たような枠組みに独自の名前が付けられているようだ。

・独インダストリー4.0
・米IndustrialInternetConsortium
・中国製造2025
・印MakeInIndia

これらの考え方の基礎になる部分には必ずデータの収集や相互接続があり、システムやデバイスはたしかに話題としてはとりあげやすいのだが、しかしそれらはあくまで手段であってオペレーションに過ぎない。導入のカナメはやはり「何をするか」「どうなってゆくのか」という目標とビジョンなのだ。その全体を見渡すならば、工程の自立/自律、工程を品種と数量の制限から開放しようとする動き(イージーオーダーやセル生産の併用など)、ニーズから販売とそのレスポンスまでの連携、このようなものが概念としてあげられるだろう。実体をイメージするならば、多品種少量生産から大量生産までをフレキシブルにこなせる自動化された工程が、工場内だけでなく販売や調達先までを接続したネットワークによってコントロールされる、そんな感じではないだろうか。汗や悩みや確執の無い、よく昔のSF映画にある乾いた雰囲気だ(良いかどうかはまた別の問題だが)。

さてしかし、これには注意しなければならない点がある。ひとつは、かつてあったように、特定の巨大企業が自らの事業として他社を囲い込むような枠組み(基本システムなどと呼ばれるかもしれない)がこの中には混ざってしまっているということだ。もうひとつは、国内で提供される情報には、時のいわゆる「飛び道具」テキな名前に乗っかって危機感を押し出し自社の製品を拡販する新事業(XXXソリューションとかXXXシステムとか..)がかなりの割合で存在しているということである。これらのことは了解しておかなければならない。しばらくは、隙をついて入ってきた彼らに背中を押され舵を切ってしまう、そんなケースも特に日本の中小企業では多くなるに違いない。受注の条件として強制される場合や、ビジョンやアイデアは無いが漠然とした危機感とお金がある場合、要注意だ。

また、この考え方が要求する具体的な作業についても一度考え直しておかなければならない。作業の第一歩には、工程で使うタグやセンサ回路およびコンピュータを一気に増やし、データ収集と自動化を促進すること、さらには、設計/製造/顧客/調達がデータとコントロールを共有するシステムを作ることなどがある(おそらくこれらが「IoT/ICTを利用して」の意味であると思われる)。推進するほう(自社か他社かはともかく)は、事業経営から製造工程を直接コントロールすることを強く意識してその施策を練ってくるはずだ。このことは、例えばSCMのインスタンス(その一部)とも非常によく似ており、違いはあまり明確ではない。また、今までにも繰り返し行われてきた、現在の製造工程をひっくり返して要らないものや人を捨て、必要なものを拾い出し全て公開してその是非を問う、という作業もやはり必ず行われることを忘れてはならない。それはいつの時代にもある、「技術者の既得権益」と「価値創造の義務」とのせめぎ合い 設計(1)設計(2) が、また浮き彫りになる場面でもある。


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産業2015-b    2015(#19)


産業2015-aより続く)

では、これからこの島の産業は、米国が創りあげたそのような仕組みにこれまでと同様食い込んでゆくことができるのだろうか。いや、今度ばかりはそうはいかない。それができない事こそ、この仕組みが機能している一番の理由だからだ。

自前でこれを組み上げることはさらに難しい。この新しい産業の形態をリードするには、世界に受け入れられる規則や手順を創り出し、議論と調整を繰り返し広く納得してもらうことが必要である。そしてそれが今の私たちには難しいのだ。たとえば製造業では、定義の定まらない形だけの言葉でプロセスをコントロールすることはできない。言葉を正しく定義するということは、高い水準の知識と理解をもって現象を分解し整理するということだ。しかし私たちは20年間このことに対する手当てをまったく怠ってきた。言い替えると、たえず海外から持ち込まれる様々な枠組みを、その構造や手順の真の意味を棚卸しできないまま使い続けてきた。したがって産業の創出に関わる私たちの能力は、今でも、その枠組みにきっちりと収まった小さな箱の中に押し込められたままでいるのだ。現在目の前にある社会や紛争や経済の理解なくして、基本的な自然現象の理解なくして、「技術立国」「ものづくり」「理系か文系か」「基礎研究か応用開発か」などと勘違いしたままで、誰がその声に耳を傾けてなどくれるだろうか。米国は、戦後半世紀、日本企業を自らの工場として必要な技術をふんだんに与えてくれたように見えるが、それとても彼らの力のまだほんの一部に過ぎない。そしてこれからそのパイプは一方的に細くなってゆくに違いない。すでに彼らにとっては、自分たちが「馬力をかけて」作り上げた技術としくみをどうやってうまく他国に使わせるかが21世紀の戦略そのものになっているからだ。私たちには今後しばらく、米国発の新しい枠組みや技術(*1)を以前のように無条件で読み解き利用することは難しくなるだろう。

もうひとつ、開発段階にリーダーシップを継続して発揮できる機関が存在するということも、この構図の頂点に立つには大切な要素である。開発に望まれる成果は、少なくとも産業と市場の構造を一部作り変えるほどの規模であるはずだ(でないと意味がない)。それに応じた規模は、影響を受ける複数の業界や社会との資源のやりとりが存在してはじめて成立する。そしてその環境は毎日変化している。したがって開発のリーダーには、内部の状況と外部の環境に応じて資源の効率的な再配分を常に図ることはもちろん、目標や期間や予算、それにメンバーさえもダイナミックに入れ替えることが求められるのだ。例えば米国の進化のエンジンのひとつ、DARPAにはそういった条件が比較的揃っているかもしれない。目的の独立性は高くシンプルで、意思決定機関が生きておりしたがって個々の状態や個別のゴールはよく変化し、経過も成果も公開して常に信任を得ることを約束している。明確なスローガンとダイナミックなアジリティの下で強大な力を発揮しているのだ。どこかの国にあるような、「現状比XX倍」などという開発側からの一方的な数値を「なにやらプロジェクト」にでっちあげて小さな予算をゲットし、各部所にこれをブレークダウンした計画を出させたらOK仕事終わり、あとは目標数値必達でみんな頑張ってねと、そんなふざけた研究開発とはまったく対照的である(*2)。



そうして我々は、いましばらく米国に従い欧州に倣い中露に怯えながらも、臥薪嘗胆/堅忍不抜、100年前に戻ってもう一度その地力を蓄えるべく歩みを再開することになったのだが、それにしても、ここまでこの島の産業をおとしめてしまった我々には、いったい何が欠けていたのだろう。それは、「活動する人間なら誰もが持つはずの健全な疑問」であった可能性が高い。我々はこれまでの少なくとも半世紀、「どうしたらうまくゆくか」というテーマに全体重をかけ、その結果潤ってきた(または飼われてきた、とも)。そうやって「なぜそうなのか」を疑ったり求めたりする理由は徐々に失われ、したがって社会や人間や自然を理解する力が少しずつ損なわれていったのだ。そしてその証拠でもあるが、様々な環境が大きく変化したこの間、ただひとつまったくと言っていいほど変わらなかったのが、入試に侵された教育と羅針盤の無い産業とが親子2代にわたっておりなす千鳥模様の、あのどうにも不快な安定感なのである。






*1)
読み返してみると本文ではこのあたりから、新しく創り上げられるものが「枠組み」であるのか「技術」であるのかがあいまいになってしまっている。だが考えてみると、例えば人工知能とのインターフェイスを高級言語によって標準化し世界の個人に向けて開放しようという試みと、ArF液浸Finを超えるFET(例えばEUVナノワイヤ)の開発作業と、これらは一体どこが違うのだろう。どちらも投資と市場という社会のしくみから逃れることはできず、ソフトウエアも量子力学も避けて議論することはできない。「枠組み」であっても「技術」であっても、これらを造りあげるのは精緻巧妙な人間の活動であることにかわりはない。

*2)
→ "FUPET"


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産業2015-a    2015(#17)


2015半導体(3)より続く)

(このあたりで私はようやく、「日本人は」「日本は」と言ってしまうことの頭の悪さと格好の悪さと浅薄なナショナリズムに気がついた。)
かくしてこの島の製造業は、半導体だけでなく他の多くの技術ドメインにおいても、「製造」の定義を再構築できず、ほとんど何も提示することができないまま一方的なコスト競争に巻き込まれていった。自動車産業は欧州メーカーの知性と感性に長く後塵を拝し、世界の家電製品にもはや「メイドインジャパン」は無いに等しく、原発やエネルギー、軍需などの重厚産業は相変わらず欧米のお下がりのままだ。いっとき国内に希望を持ってとらえられたロボットにしても、実際には人工知能で大きく出遅れ、産業用は中韓の攻勢によって戦線が限定され、民生を刺激するのも仏Aldebaran(ペッパー)や米iRobot(ルンバ)である。
規模の縮小に対する是非はともかく、これらはいったいどういう現象なのだろう。ただ我々がアホなだけなのならまあお気楽で良いのだが、経営スパンの絶望的な短さとか何か制度にその理由の一端があるとすれば少しもったいないかもしれない。

一方国外に目を転じてみると、その20年間の初めは、米国では長い製造業の不振がようやく底を打ちつつあった時期である。
それまでの低迷に多くを学んだ彼らは(日本のLSI研究組合にさえ学ぶという、このあたりが彼らのDNA(*1)なのだ)、回復の余勢を駆って、新しくインフォメーションハイウエイからIT革命へと続く戦略ドリブンな産業を興し(起こしたのかも)、「製造」という業態の考え方を大きく変えてゆく。市場と産業との境を取り払い、「価値」「定義」「規格」をまるでグローバルな合意であるかのように世界中に提供し、「このとおりやっていただければ必ず仕事はあります。皆さん一緒にがんばりましょう。私が音頭をとらせていただきます。」と、そんな構図である。例えば、自動車産業のサプライチェーンを統率するため90年代末にはQS9000が日本にも導入され、また、2000年前後にインテルがチップセットの仕様書を(広義の)RFCとして公開しはじめたころをご存知の方は多いだろう。そうやって、製造国がどこであっても、市場がどこになっても、資金がどこから出ていても、最終的にフォードやチップセットを展開する会社が一切を仕切る、という枠組みができあがっていったのだ。(電池の発火やエアバッグの不具合など製造責任を部品メーカーに直接負わせるというルールも、一見逆方向に見えなくはないが実際にはこの「仕切り」の結果/効果なのである。)

産業2015-bに続く)






*1)
→ "関係と帰納"


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2015半導体(3)    2015(#16)


2015半導体(2)より続く)

90年代を中心にした20年間、パワーデバイス/RF/アナログを除いたいわゆるロジックなシリコン半導体は、産業としてはほとんどひとつの課題に対してのみ多くの資源を投入し続けた。微細化と集積によって膨張した記憶と演算の力をデバイスやデータと人との対話にどのように用いるか、である。しかしそれは今から考えると、文化/文明の維持や自然からの要求を背景とした社会の基幹たる産業に発展するものでは残念ながらなく、その場所への成長の過程として認められるようなものでもありはしなかった。実際この種の半導体は、技術を重ねれば重ねるほどただ単に安くなってゆくだけであって、それにつれて、もともとそれほど必要とされていたわけではなかった機能の価値も同じように一方的に下がっていった(*1)。少なくともこの時点でこの産業は、食料/鉄/機械/輸送/エネルギー/建築土木/教育/放送出版に比べると、人類に対してそれほど大きな影響を与える要素を持ちあわせてはいなかったということである。

21世紀に入り、肥大化した一方で事業としても技術的にも競争力をほとんど失っていた国内半導体メーカーは、おおかたの予想どおりすぐその経営に行き詰まることになる。彼らは、巨大な本船を見限り(*2)、多くの乗員をそのデッキに残したままいくつかの小さなボートに乗り移ることになった。それは例えばフラッシュメモリ、イメージセンサ、パワー半導体、SoCなどだ(*3)。分社化/子会社化/持株会社化/合併という切り貼りを繰り返すことによって、本船に残った人や物をまるで溜まった澱のようにこそぎ落としていったのである。

このような少し前の日本の小さな脱出用ボートと、今年再編が進んでいる世界の半導体業界とは、その意図や展望,原因などが明らかに異なる。後者は現在の世界の大きな動きの一側面である。それは例えば「自動運転」という流れの中に本船が自らのエンジンをもって漕ぎ入れることで、かつての日本の半導体メーカーのような悲惨な沈没を回避しようという巨人たちの意思の表れである。淘汰の時代を生き残った21世紀代の半導体メーカーが、「横に拡がった」現業における近い将来の閉塞を予測し、今はまだ比較的力の強くない自動車用/産業用/特殊用途半導体メーカーを飲み込んでその技術から市場までを「縦に割って」次の足場に据えようとする姿勢が、同時多発的な「座礁の前の一斉転針」となって大きなうねりを海原に巻き起こしているのである。

そして、日本の残党が乗った小さな脱出用ボートのいくつかも実はこのうねりの中にいま漂っているのだが、幸か不幸か、先に本船を沈没させてしまった当事者たちに潮の向きなどわかるはずはなく、制御する術など持ち合わせていないということもある意味あたりまえなのである。

産業2015-aへ続く)






(*1)
これに比例して情報の価格も一気に下がったが、さらに呼応して情報の質が徹底的に貶められてしまった(「情報」という言葉の定義が変わるほど)ことは、次の世代に大きな変革を強いることになった。この悲劇は、本ページのような瑣末で国家主義的な議論とは別に、世界の災禍として正しく認識しておかなければならない。

(*2)
エルピーダメモリが会社更生法(100%減資)を受け(後にMicron社が買収)、富士通がマイコン/アナログ事業をSpansion社に売却したような派手なニュースは氷山のほんの一角であるが、実際この頃の国内半導体メーカーの分社/統合/整理/縮小ラッシュは、その上にキャリアを築いていた多くの人たちにとって、いま立っているその地面がまさにうねっているような、あまり気持ちの良くない経験だった。

(*3)
2014年のランキングにある東芝(NANDフラッシュ)、ソニー(イメージセンサ)以外では、日亜(LED)、旭化成(MEMS)、富士電機(IGBT)、サンケン電気(車載ASSP)などが、額は大きくなくても確実な活動を続けているようだ。


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2015半導体(2)    2015(#15)


2015半導体(1)より続く)

2015年初頭よりこれまで、主な半導体メーカーの再編は以下のとおり進んでいる。

1月、Infineon が IR の買収を完了。
  https://en.wikipedia.org/wiki/International_Rectifier
  http://labusinessjournal.com/news/2015/jan/13/infineon-closes-purchase-international-rectifier/

3月、IntelがAlteraの買収に動いているとの報道。
6月、IntelがAlteraを現金約167億ドルで買収することに両者合意。
  https://www.cnet.com/news/intel-to-buy-altera-for-16-7b/
  https://en.wikipedia.org/wiki/Altera

3月、NXPがFreescaleを買収すると発表。
  https://en.wikipedia.org/wiki/Freescale_Semiconductor

5月、Avago(HPとAgilentの半導体部門)とBroadcomは、AvagoがBroadcomを370億ドルで2016Q1までに買収することで合意。社名はBroadcomが継承される。
  https://www.wsj.com/articles/avago-to-buy-broadcom-for-37-billion-1432811311
  https://en.wikipedia.org/wiki/Broadcom



(参考)2014年の売上上位20社

CompanyMillions o US$
Intel49,964
Samsung(k)38,273
Qualcomm19,266
Micron16,389
Hynix(k)15,737
TI12,195
Toshiba(j)08,496
Broadcom08,387
STMicro(sw)07,395
Mediatek(tw)07,194
Renesas(j)06,910
Sandisk06,116
Infineon(gm)06,071
NXP(n)05,457
Avago05,423
AMD05,388
Freescale04,560
Sony(j)04,528
Nvidia04,007
Marvell03,812
--
Top 20235,568
Others117,663
Total353,231

Worldwide Ranking of the Top 20 Suppliers of Semiconductors in 2014
(IHS)

2015半導体(3)に続く)


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2015半導体(1)    2015(#13)


7月2日、オランダNXPは臨時株主総会を、米Freescaleは特別総会をそれぞれ開催した。両社は、NXPによるFreescaleの買収が、ともに99%以上の賛成を持って承認されたことを発表した。以降、適切な管轄の下で、反トラスト法やその他の監督機関の承認を経て、合併の手続きは2015年後半までに終えたいとしている。
NXPはこの買収について同年3月に発表していた。

EINDHOVEN, Netherlands and AUSTIN, Texas – July 2, 2015 – Today, NXP Semiconductors N.V. ("NXP") (NASDAQ: NXPI) held an Extraordinary General Meeting of Shareholders (Special Meeting) and Freescale Semiconductor (NYSE:FSL) held a Special General Meeting on NXP’s acquisition of Freescale. Both NXP’s Special Meeting and Freescale’s Special General Meeting approved the merger proposal with over 99% of the votes cast in favor of the merger. The NXP Special Meeting also appointed Gregory L. Summe and Peter Smitham as non-executive directors of NXP, effective as of the closing of the merger.

“We welcome the decisions to approve the merger proposal with such an overwhelming majority. The combination of NXP and Freescale creates an industry powerhouse focused on the high-growth opportunities in the Smarter World. We fully expect to continue to significantly out-grow the overall market, drive world-class profitability and generate even more cash, which taken together will maximize value for both Freescale and NXP shareholders,” said Rick Clemmer, Chief Executive Officer of NXP.

Completion of the merger remains subject to obtaining antitrust and other regulatory approvals in certain jurisdictions, and other customary closing conditions. NXP and Freescale continue to expect the merger to close in the second half of calendar year 2015.

http://media.nxp.com/phoenix.zhtml?c=254228&p=irol-media-center

2015半導体(2)に続く)


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資本金(3)    2015(#12)


資本金(2)より続く)

会社法では、株式会社に対し貸借対照表の公告を行う義務を課しており、怠れば100万円以下の過料とされている。公告の場所は登記簿に記載され公開される。
(ちなみに、登記簿の資本・株式区はまだ残っている。)



会社法第四百四十条(計算書類の公告)

株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
2  前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号(官報)又は第二号(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙)に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。
3  前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。



会社法第九百七十六条(過料に処すべき行為)

発起人、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員、監査役、執行役、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員、清算人、清算人代理、持分会社の業務を執行する社員、民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役、執行役、清算人若しくは持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者、第九百六十条第一項第五号に規定する一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者、同条第二項第三号に規定する一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者、第九百六十七条第一項第三号に規定する一時会計監査人の職務を行うべき者、検査役、監督委員、調査委員、株主名簿管理人、社債原簿管理人、社債管理者、事務を承継する社債管理者、代表社債権者、決議執行者、外国会社の日本における代表者又は支配人は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一  この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
二  この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたとき。
三  この法律の規定による開示をすることを怠ったとき。
四  この法律の規定に違反して、正当な理由がないのに、書類若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧若しくは謄写又は書類の謄本若しくは抄本の交付、電磁的記録に記録された事項を電磁的方法により提供すること若しくはその事項を記載した書面の交付を拒んだとき。



株式会社の登記事項と例(一部抜粋)

<商号区>
会社の公告方法
    官報に掲載してする。
貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項
    https://www.…

<資本・株式区>
単元株式数
    10株
発行可能株式総数
    3000株
発行済株式の総数並びに種類及び数
    発行済株式の総数500株
    各種の株式の数 普通株式400株 優先株式100株
資本金の額
    金1,000万円


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資本金(2)    2015(#11)


資本金(1)より続く)

資本金という数字の出番は、もともと(旧商法の規制でも)、ほとんどがこれを新しく計上しようとする局面(設立/増減資)に限られていて、それもただ自己資本(*1)のひとつの要素として加算されるに過ぎない。また、その自己資本比率においても、評価の基準のはこのところ大きく変わってきているようだ。会社法では最低資本金制度が廃止され、資本充実/維持の原則も無くなった。これらの事は、いまどきの債権者は資本金ではなくバランスシートとキャッシュフローによって会社をダイナミックに評価している、という実態を表してもいる。銀行のバーゼル(BIS)規制など金融システムのコントロールや配当額を決めるために用いる場合を除けば、会社が普通に運営されている期間、資本金を経済活動の指標として参照する機会は実際あまり多くないのである。

余談だが、そういった意味では、中小企業といえども、公告義務や情報公開にいつまでも消極的で資本金だけしか公にしていないような会社は、特定の銀行や投資家に自由を奪われ、自らチャンスを見逃し、公の評価に磨かれ機動性も高い今どきの会社の踏み台となって、残念ながら遠からず消えゆく運命にあると言えるだろう。まるでアメリカのようではあるが、是非はともかく、それが現実だということもわれわれは受け入れておかなければならないのだ。

資本金(3)に続く)






(*1)
株主資本<自己資本<純資産、それぞれのの定義は以下のとおり。ここではこれらの差を考えていない。
・株主資本=資本金+資本剰余金+利益剰余金+自己株式
・自己資本=株主資本+評価・換算差額
・純資産=自己資本+新株予約権+少数株主持分


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資本金(1)    2015(#10)


連結でも債務超過寸前と言われていたシャープが、2015年3月期の決算で「資本金1200億円を5億円に」することを発表し、私などは、「あれまあこんな急にダメになるもんなの?」と思ってしまったクチの一人である。経営破綻、100%の有償減資と償却、JAL、エルピーダ..などとの違いがわかっていなかったわけだ。
実際には、①その前の DES(Debt Equity Swap) による増資で、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が2000億円の債権を優先株式に変え(総資産約2兆円の右側で負債2000億円を純資産と入れ替え)、これによって債務超過を回避させた彼らは経営を握り、②ここでその配当を得るべく純資産の中で累損と資本金とを交換した(分配可能額をプラスにした)=無償減資を行った、と、ざっくりとそんな感じの構図だということらしい。そこでは資本金は、もしこの法人格が公式な見解を出すとすれば、「手を付けずにとっておいたがここで使う。損失は想定内なので予定どおりこれで補填できる。これで法的に配当もできるし次は大丈夫。」くらいの温度で話されるのだろうか。
「株主責任を問う」などという報道は、優先株式と普通株式との権利の差くらいのことなのだろう。(ちなみに現在の時価総額は2500億円だが、PBRは1倍ではなく8倍とされている。)

さて、ではそもそも「資本金」とは何なのだろう。できた女房のへそくりのようなものなのだろうか。中小企業にとってはなにやら「看板」のようでもあり、銀行とつながっていなければならないそのための首輪とリードのようなイメージもなくはない。

→ "資本金(2)" に続く


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日本の米農家    2014(#08)


以下、全文引用。

「 ここで注目したいのは、農家が昔からの生業を続けるだけで、実質、公務員としての安定収入が得られるという仕組みである。この辺は例の特定郵便局の仕組みと似ている。あれも地元の有力者のヒトと家屋を使った効率的な公務遂行の一形態である。生業かつ公務員…。何とすばらしいイノベーションだろう。まさにこれこそが先端的な「パブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)」のモデルではないか。そうなのだ。青い鳥は実は我が家にいたのである。

 日本にはこのように、一見、旧弊かつ既得権益の擁護の仕組みに見えるものの、実のところ世界の先端をいく、深く考えて作られた素晴らしい仕組みが多々ある。日米安保しかり、公共事業しかり、終身雇用しかりである。表面だけ見ると既得権益に見えるし、実際そう批判されて当然という弊害がある。しかし、よくよく考えれば、少なくともそれができた当初は国にも本人にもまわりの人たちにもメリットがあった。特にうまいのは、関係者のやる気やプライド、面子が保たれる仕組みである。時代にあわせた修正は必要だが、丸ごと変えるほど悪いものかどうか。わが国のコメ農家の保護政策もそのひとつではないか。」


ニッポンのコメ作りに、成長戦略は向かない
上山 信一
2013年10月24日(木)
https://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20131022/254940/?P=3


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