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白黒反射フロントライト(4)    2012(#06)


"白黒反射フロントライト(3)" より続く

しかし、このときの反射散乱型表示デバイスは、結局、花道を通って世に出ることはなかったのである。大きな原因は、すでに市場をうかがいはじめていたカラーTFTLCDの派手な見映えと日本中を巻き込んだ新産業への期待だったが、もちろんそれだけではない。

電子ペーパー用途
1. コントラストが紙に比べるとやはり低かった。
 (フロントライトでの補完ー当時は蛍光管と昇圧回路ーは、コストとサイズに「紙」との差がありすぎた)
2. 本体の使うメモリ容量は今より3-4桁低く、ダウンロードという概念も心許なかった。
3. 駆動にアクティブマトリクスを用いるとコストがTFTLCDとあまり変わらなくなる。

ラップトップPC用途
1. フロントライトのライトガイドが、実装方法も含め実用域に達していなかった。
2. アクティブマトリクスを用いても書き換え速度が遅くリフレッシュも必要。
3. CPUなど演算処理の電力が大きく、表示デバイスへの風当たりは比較的弱かった。

これらが、ここでの主題である「部品としての表示デバイス」の再認識だ。ライトガイドやLEDの重要性がまだ認識されていなかったこと、主導すべきアプリケーションにメモリ容量やバッテリ、それにダウンロード環境が不足していたということは、電子ペーパーとラップトップPCをそれぞれ既成のカテゴリに固く閉じ込めた。カラーTFTLCDという巨大な入道雲にかき消されてしまったこととも合わせ、当時の事業フィールドの寂寥たる有り様は、ただそのときが天の時ではなかったということに尽きる。
また、現在と比べてもそれほどの差は無かったコントラストや書き換え速度も、もしそこで「時」を得ていたならば、次の1年で充分なつくり込みが間違いなくなされていたはずだ。実際、そう確信できるほど我々は当時このデバイスに対してやる気がなく、その頃から今日またお呼びがかかるまでに反射散乱型表示デバイスに投入されたリソースはいったいどれくらいだったろうか。

これは何かを責める材料ではなく、特に反省でもない。ただ、表示デバイスとはそれ自身受動的なものなのである。


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白黒反射フロントライト(3)    2012(#05)


"白黒反射フロントライト(2)" より続く

反射散乱型表示デバイスの最初の流れは、1990年頃、平面ディスプレイブームの真っ只中にあった。
このころ、TN材料によるバックライト透過型のカラーTFTLCD(現在の液晶TVやPCモニタになった:以降 "カラーTFTLCD")は、画像や映像に向け,ブラウン管に代わる可能性をすでにいくつか示しはじめていた。しかし一方では、コストと消費電力の高さが原理上その根に絡みついて離れないということも、この時点ですでに目立ちはじめてきていたのである。テキストやパターンを表示するにはカラーTFTLCDはいかにも大仰であると、そのときの懐疑的な声は当然だった。事実、プラズマの橙/黒、STNの白/青など、ラップトップPCのモニターはモノクロで充分に機能した。(今これが表示されている画面でも背景と文字はそれぞれ白と黒なのではないだろうか。)

そこに、バックライトが不要でしかもメモリ性を持つ反射散乱型表示デバイスが、カラーTFTLCDに対し、こと消費電力に関しては何桁ものアドバンテージを持って浮上したのである。このことは当時、電子ペーパー、あるいはラップトップPC、そのどちらかの市場への期待をかき立て、日本では、液晶TV事業に要する天文学的な投資にひるんだ多くの会社が舵を転じこの分野にアタックを始めていた。

そして90年代半ば、PDLC、IRIS、PCAP、などという名前で、また技術は違うが反射型白黒MIMLCDも含め、いくつかの成果はすでにターゲットに迫っていたのである。



"白黒反射フロントライト(4)" に続く


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白黒反射フロントライト(2)    2012(#04)


"白黒反射フロントライト(1)" より続く

Kindle-Paperwhite
Kobo-Glo
これらが表示デバイスとして備えるのは、E-Ink社の "Pearl Imaging Film" である。散乱材料が挟まれた同社のフィルム基板を、提携先である Prime View International や LG Display が供給するTFT基板にラミネートし、その前面にLEDとライトガイドからなるフロントライトを重ねている。

E Ink: Technology: Display Products: Pearl Displays
https://www.eink.com/display_products_pearl.html

Pearl Imaging Film from E Ink offers two advantages over other technologies. First, it provides a contrast range that's 50% greater than our previous generation film, so text is more readable as it "pops" off the page. Second,it's faster, so reading is more natural and pages turn more quickly.

Enhanced Readability
E Ink Pearl creates a dramatic increase in contrast from earlier generations, giving eReaders a contrast ratio close to that of a paperback book. The crisp text and detailed graphics are also highly readable in direct sunlight. Pearl's 16 levels of grey produce the sharpest rendering of images with smooth tones and rich detail.
Improved Speed
E Ink Pearl offers improved speed in page turns from prior generations, with update times ranging from 50-250ms. However, addition, E Ink Pearl supports localized animation for more enticing advertising content for eNewspaper or eMagazines and a richer educational experience in eTextbooks.
Lowest Power Consumption
E Ink makes the lowest power displays in the eReader industry. And Pearl advances that capability with next generation performance. Unlike other technologies, E Ink is bistable, which means it needs no power to hold an image or page of text. Learn more about how our ink significantly prolongs your battery life on our technology page.
Modules
E Ink Pearl modules consist of a TFT (thin film transistor), Ink layer and Protective Sheet. In addition, product designers can include a touch solution, which is incorporated into the module stack. E Ink currently offers digitizer and capacitive touch solutions. Digitizer touch technology utilizes a stylus to update the display, with the touch sensor sitting under the TFT. Capacitive touch technology utilizes finger swipes, and is placed on top of the display module. E Ink's touch solutions will not affect the reflectivity of the display.

→ "白黒反射フロントライト(3)" に続く


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白黒反射フロントライト(1)    2012(#03)


家庭用テレビセットを除けば、表示デバイスは、たとえその時代を彩る製品の顔になったとしてもそれは必ず従属物としてである。表示デバイスは、主役では決してなく市場を切り拓くパイオニアでもなく、良くも悪くも部品である。産業の当事者が逆に忘れがちなこのことを、最近また思い出させてくれたアイテムがある。

Kindle-Paperwhite
Kobo-Glo

2つはいずれも電子ブックリーダーで、反射散乱型表示デバイスを目的型情報ディスプレイとして搭載する(*1)。明るい場所での見え方は紙の上の黒インクと同じで、さらに暗い場所でもフロントライトが表面を照らす。「良くも悪くも部品である」という認識は、これが20年前、スタートラインでスタンバイしたまま一度朽ち果てた技術だからである。



→ "白黒反射フロントライト(2)" に続く






(*1)
目的型情報ディスプレイを搭載する製品の行方は、PCからひとつの製品が分化して立つ可能性の指針でもある。たとえば上記アイテムの理想像は、資料/図面/テキスト情報の表示と編集と計算、通信、出力制御など、大昔からPCにあった機能だけを抽出したようなもので、充分薄く軽く、数週間充電せずに開きっぱなしで、昼夜屋内外を問わず傍らに置いて本業を支援するというスタイルだ。人を煩わせない/主役にならない/能動的には何もしないという意味である。(注:現代の「タブレット」はPCから逃れることができていない。) 性能面でたったひとつ残る課題は、書き換え速度(リフレッシュを含む)だけだろう。


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NEC液晶テクノロジー白黒(2)    2008(#9)


NEC液晶テクノロジーは、マイクロカプセル型の電気泳動ディスプレイ(Electrophoretic Image Display Device:EPID)モジュールを発表した。FPDI2008に出展する。
1600x1200ドット(175um)、アモルファスシリコンTFT、モノクロ16階調。
反射率は43%、コントラスト比10:1を保つ視野角が上下左右とも88度。
厚みは1.5mm(回路を含まず)。

EPIDは電子辞書リブリエ(ソニー)から反射率が今一歩なのはそのままであり、これが急激に新しい市場を形成するものではまだない。ただ、その反射率が70%に近づくようになるとどこかに火がつくであろうことも予想されており、いま技術力が鍵を握っている数少ない新分野のひとつと言えるだろう。同社は秋田/鹿児島の工場を抱える1200人の製造事業体であり、産業用途を中心に新たな市場を造る(会社案内より)としている。この事業体の動きは、FPD産業が適切な規模と特化で国内に残ることができるのかどうか(半導体のときとどう違うのか)、そういった意味でも注目されている。


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NEC液晶テクノロジー白黒    2008(#8)


NEC液晶テクノロジー(NECディスプレイソリューションズではない)、20.1型-2560×2048ドット白黒TFTLCDの販売を開始。デジタルマンモグラフィの読影診断用途。年2000台を見込む。

これは1990年ごろのキヤノン強誘電、1998年IBMの"レントゲン"LCD、2006年TMDの白黒TFTLCDなどと同じく、目的型情報ディスプレイというカテゴリのアプリケーションである。

<「読み取る」という人間の能力に関して>
ドットピッチは150um程度で観察距離50cmの空間周波数は30cpdを少し超える。これは人間が輝度比を識別する帯域の上縁あたりとされる。ただこの比較は、視覚システム全体が結果として持つ能力を限定した条件でとらえたものである。フロントエンド(Σ-閾値-Δ処理をくりかえす視細胞から視神経)の非線形性は考慮されていない。マッハ現象やオブライエン効果が正しく再現されるのかどうかなどについても指針を与えない。また、パターン異常の検知は周辺視と眼球運動に強く依存していると言われており、意思をもって差分を捕らえようとしている熟練した人間の識別能力が抽象化されたテスト結果に留まるとは考えにくい。

<ソースという観点では>
このようなモニタに映される可能性があるのは、実際にはワンショットで元々以下のような情報(ドット数)を持った白黒の画像である。
・スクリーンフィルム:最大約 20LP/mm=25umドット=100M以上 と スキャナ:5M~10M との組み合わせ
・X線に蛍光を持つ撮像ターゲットとCCD積層の例:5M~10M
・X線に電気的な感度を持つ撮像ターゲットとCCD積層の例(アモルファスSeをターゲット面とするなど電子半導体分野でも話題になった):20M以上

<そもそもLCDで良いのか>
・EMSやEMIへの特別な制限、可搬性、設置スペース、安全性を考えるとLCDである。
・CRTでは視点を動かしたときに出る走査むらがLCDには無い(逆に動画用インパルス表示などの技術を用いてはいけない)。
・LCDでも視野角170度程度以上、コントラスト1000以上、階調10ビット以上、また白黒なら白輝度2000cd/m2以上が充分に可能。

これらを考えてみると、医療技術の向上や装置または方法の変化を妨げず、どんな種類の道具を使うときでも、いつでもどこででも、存在を意識させないでスクリーンフィルムと同じようにそこにぶらさがっていてくれる、そんなモニタとして4000×4000ドット程度の白黒TFTLCDが具体的にうかびあがってくる。仕様のレベルは既に研究や開発ではなく設計や経営または行政の守備範囲にある。重要なのはむしろ、未だ各社各様である表示性能(むら、ガンマ、色温度、調光、測定/フィードバック)の規格化だ。

つまり、このニュースにはどこか少し力の抜けた感がある。


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2008CES    2008(#2)


テキサスインスツルメンツが、DLPの光源にLEDを用いたHDTVの試作品を発表した。一昨年日本でもLCDプロジェクタ光源としてNovalux社などのLEDが技術提携や購入の対象にとりあげられたが、ここではLuminusDevices社のPhlatLight−LEDを用いている。面発光素子上に誘電体で光学格子を形成しコリメーションをとるという構造。従来比、HDTVでは輝度が2倍、ポータブルプロジェクタで消費電力が1/3としている。
また、キヤノン日立との3社連合のなかでIPSアルファの整理と経営を担うことになった松下だが、消費電力を半分に減らした42型プラズマテレビを発表している。開発要素には発光材料(ガス)やセル構造が含まれており、「プラズマのディスアドバンテージは原理的に..」などという説明もやっとなくなったようだ。

LCAを考慮した経済効果からは、プロジェクタや40型未満のプラズマに大型テレビセットの最適点はあるとみられている。日本国内の産業も、上のような米国企業の試みをただ見ているだけではなく、軸足を移すその先をそろそろ自力で見つけなければならない。


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カラー電子ペーパ搭載の携帯情報端末をサンプル販売    2007(#14)


画面サイズ: 12型(184.3×245.7ミリ:768×1024ピクセルXGA)のA4サイズと8型(120.2×160.2ミリ:768×1024ピクセルXGA)のA5サイズ
カラー: 4096色
コントラスト比: 4
反射率: 30%
書換時間: 8色表示2.3秒、4096色10秒

最初の電子ペーパは、1970年代、米ゼロックスパロアルト研究所によって開発された。その構造は白黒に塗り分けた小さな球をセルの間隙に埋め込んだものである。球の一部が静電気を帯びており、電界によって球を回転させる。最近では、電子ペーパは、広告媒体または通知や指示の表示としていくつもの試験運用がなされており(失敗という評価もなくはなかったが)、このような応用は、技術的な興味や経済面の支援を受けてもいる。

問題はその”紙”という名に託された過剰な期待である。電力のバックアップ無しで表示され薄く軽く持ち運びが容易で曲げられる、いずれも電子ペーパが紙に替わるための条件だ。しかし実はこれらは「いつかおそらくできること」を言っているだけなのであって、「やらなければならないこと」すなわち社会が積極的に資本を投下すべきたぐいのターゲットではない。ひとつの理由は、現代人の空間認知や動作が「紙」を必要としていることである。机に積まれてそこに存在する本、ポケットにある手帳の折り曲げたページ、読んでいる本に挟んだしおりや指も、それぞれ思考プロセスに大きな影響を与えるということが明らかになっている。もうひとつの理由は、電子ペーパが環境に優しいなどとは到底言えないことだ。電子ペーパも電子機器一般の例に漏れず、生産に必要な分を含めそのライフサイクルは、従来技術(紙)に比べて地球表面のエネルギー消費をまた加速することになるのだ。

電子ペーパは、紙としてではなくむしろ目的型情報ディスプレイとしてPC向けカラーTFTLCDを部分的に置き換える、この方角に遅からず舵を切ることになるだろう。

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Samsung:総厚0.74mmと1.29mmのLCDを発表    2007(#9)


標記前者は開発品、後者は量産品。
韓国Samsungは、中小型LCDにおいても顧客のニーズを捉え続けている。
偏光板やライトガイドの薄型化はもちろん、ベゼルの工夫によって強度を保ったことが大きなポイントである。

ここでは話題を転じ、顧客が自社携帯電話事業部門であることに注目してみる。

一般に携帯電話機では、筐体単体の強度分布と、内蔵する回路基板、LCD、緩衝材や充填材とを相互に作用させて製品としての耐衝撃性を確保することになる。例えば筐体のゆがみ方によっては回路基板を部分的に厚くしなければならなかったり、逆に筐体の形状を工夫してゆがみの曲率を分散することでLCDを薄くできたりする。もしも筐体設計部門とLCD設計部門とが、共通の尺度でお互いのハードルを認識できていれば、目標を達成するため、改善のターゲットが筐体なのかLCDなのかを越えたアイデアが自然と出てくるものである。

専業LCDメーカは、部品としてLCDを他社に販売する際、性能を数値化して理解を求めなければならない。そのためには、ほぼ無限といえる条件の組み合わせから顧客の使用環境にできるだ近いものを選ぶことが必要になる。しかし、仕様書というものは、いかに多くの数値をもって性能を表現しようとしても、その数値自体にどのくらいの重みがあってどのような可能性があるのかをほとんど伝えることができないのである。同様に顧客の使用環境もその時点でどのくいらいの確度(重要性)を持っていたかがわからないのだ。例えば「真ん中を押して5Nまで」というLCDの仕様にお互い困っていたとしても、それが斜め上に5mmずらして8Nまで大丈夫なものなら、これは筐体の変更を考えるべきであろう。あるいは、「最低コントラストが1.4Vで300、1.0Vで100」という仕様も、「1.0Vであっても60℃を越えなければコントラストは250を保つ」LCDが半月後にできるというのなら、使用条件を調整し、かつ半月遅らせても消費電力を半分にしたほうが良いかもしれない。

−「完璧な」仕様書があれば製品もベンダもブラックボックスでかまわない。
−ベンダはヒアリングした顧客の使用条件に合わせて仕様化すればよい。
ISOxxやQSxxで飼いならされてきた年数、貧相なアイデア、無駄にキャリアを重ねただけの責任感によってこのような取引につい安心してしまう我々であるが、その製品はおそらくどんな消費者も驚かせはしないし、そこは「技術」という言葉すら存在しないハゲあがった大地なのである。


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米Microvision:MEMSプロジェクタを発表    2007(#6)


CESでデモ。MEMS(*1)2軸スキャナと半導体レーザーを用いたスキャン型超小型プロジェクタ。モバイル機器への搭載を目指す。光源には米Novalux社製の半導体レーザーNECSEL(Novalux Extended Cavity Surface Emitting Laser)を使用(*2)。光束は10~15lm。映画やTVなど観賞用ディスプレイでなく、目的型情報表示装置としての市場を形成するとみられる。

スキャン型超小型プロジェクタとしては他に、例えばフィンランドUpstream社やシリコンバレーのベンチャ企業が、LED光源をフォーカシングすることでビームの光源とする光学システムを開発している(Photon Vacuum)。

一方MEMSを用いない画素型プロジェクタでは、従来のリアプロジェクションTVの光源を高輝度(高効率)半導体レ−ザやLEDに入れ替えて各色光を形成したものがいくつか発表されている。展示や発表などで輝度や色の仕様を見ると、他の薄型TVに対する実用上の遜色はなく、資源の利用効率からは近い将来の商品化が大いに期待される。またリアプロジェクションTVは、これまで光源が充分な光束を供給できなかったことで、表面輝度を保つために視角特性や反射特性などの「派手さ」を犠牲にせざるを得なかった。高輝度光源はこれを助けるだけでなく、散乱液晶やカルコゲンを組み合わせるなど、反射散乱状態を使用環境に対し動的にフィットさせるような技術も拾いあげる(アクティブスクリーン)。






*1)
MEMSは980年代に研究がスタートした。これまでに、アクチュエータ、圧力センサ、流速センサ、角速度センサ(ジャイロセンサ)、加速度センサ、インクジェットプリンタのヘッド、波長選択スイッチ、メタノール濃度センサー、投写型プロジェクタなどにデバイスが利用されている。その他、高周波用RF−MEMS、光ファイバーに用光MEMS、医療分野のバイオMEMSなどがある。

*2)
日本では三菱電機とセイコーエプソンが技術供与を受けるかまたはデバイスを購入することを発表。スキャン型プロジェクタも視野に入ってはいるであろうが、おそらくまずは画素型プロジェクションTV向けとみられる。

*2)
これまでどおり緑色光源としてはLiNbO3などの非線形光学結晶による波長変換を用いていると考えられる。


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日立ディスプレイズ:ポリシリコンTFTLCD工程を新開発    2007(#5)


既存アモルファスシリコンTFTLCDラインへの僅かな追加投資を行うだけの工程。

アモルファスシリコンと同じボトムゲート構造。ポリシリコンのスターティングマテリアルはアモルファスシリコンでレーザ再結晶化。ゲート電極によるセルフアラインの可能性もある。これまで20年をかけて一歩ずつ進んできた、地味ではあるが意味のあるコンセプトだ。ボトムゲート構造は、膜形成の初期工程からデバイスの完成まで、水素などの補償元素をうまく使うことができる。更に、n型/p型層をCVDで積む事ができ、結晶/ポリシリコンの製造工程で大きな比重を占めるドーピングと活性化が不要になる。また、現状と直接関係はないがSOI構造になる。

しかし、これらが再浮上してきたことにはもうひとつ別の側面がある。最近のLCDには、RAMやDACを搭載すること、それらへのアクセスが高速であること、またインターフェイスとして差動信号を受けることが求められてきている。こうなるともう、ポリシリコンTFTが結晶シリコンICの役を全て担うことはできない。途中に結晶シリコンICが介在するのであれば、高い機能は当然結晶シリコンICに集中して配される。LCD上のほんの一部分を占める回路を形成するためだけに、大切なエネルギーを他の大部分にたれ流すことはない。一見華やかに見える「システムの集積」をこうやって考えなおしてみると、ディスプレイデバイスとしての根本的な問題までもが浮き彫りになってくるのである。

一方、工程のあり方についてだが、上述のとおりアモルファスシリコンとポリシリコンとで殆ど差が無くなるとすれば、そこではアモルファスシリコン/ポリシリコンの比率を固定することなく自由な組み替えや混在が可能になる。また、結晶シリコンICを載せTFTでは小型高速のCMOSを捨てるとしても、NMOSまたはPMOSだけ、あるいは大型低速のCMOSでこれを補う回路を組み込むことは可能である。たとえば簡単なデマルチプレクサの形成だけで小型高精細LCDの実装工程を削減することもできる。さらに、TFTのメインテーマが画面に戻ってくるということは、工程や条件の最適化が四辺から開放されるという点で、1フレーム内の様々な処理、あるいは画面全体にばらまかなければならないセンサの内蔵に対して大きな後押しとなるだろう。このような工程は、多品種生産に向いているだけでなく、外的な環境変化に対応するマルチプルな製造ラインとしても魅力的な選択だ。


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CIFS提供対象    2007(#4)


06年にマイクロソフトが公開した「CIFS(Common Internet File Sharing)の技術文書」は、GPL(GNU General Public License)などオープンソースライセンスのもとで開発されるソフトウエアを提供対象から除外している。CIFSとは、ファイル共有プロトコルとしてTCP/IP上でWindowsサーバ内ファイルの共有を実現するものである。このCIFSをエミュレートすることによって(Samba)、UNIX/LINUXサーバはWindowsクライアントに対してもファイル共有機能を提供することが可能となる。したがって標記の除外は、「Windowsクライアントからは、これからは普通にLinuxサーバへ接続するわけではありません」という宣言でもある。

GPLの下では、ソースコードの公開義務は既存の知的財産までをも侵害する可能性があると考えられており、確かにそのこと自体はソフトウエアベンダにとって大問題である。だがそれよりも、マイクロソフトがCIFSの提供に関してGPLソフトウエアを対象から除外したことは、.NETを主力にサーバ市場を支配しようという同社が、その市場でオープンソース陣営の侵攻をくいとめようという、そんな格好になってしまっている。

もともとオープンソースは、技術でなく戦略によって作られる寡占に異を唱えたもの。たとえば子供たちにとっては(おそらく昔の我々にとっても)、隠すという動作自体が理解を超えており強い違和感を伴うはずだ。このような社会的な事実もまた産業に重大な影響を与えているのである。ブラックボックスとして隠蔽し知的財産として保護するその対象や範囲は適正かどうか。老いた取締役が「経済」をどこか取り違えて満足していたとしても、我々は常に自問すべきなのである。

「オープンソースは破綻のモデル」であると主張するマイクロソフトは、一方で自社ソフトのソースコードを一部公開し、学術研究用途に限り大学や限定された企業での利用を認めている。しかしこれも「独禁法訴訟の是正措置を有利なものにするため」との見方が強い。


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LG-Electronics:“PRADA”ブランドのLG製携帯    2006(#21)


コストや見ためが大きなウエイトを占めていても、LCDは部品である。最終製品がどのような需要を市場で喚起するかにこの産業は依存している。 

韓国LG Philips LCD(LGPL)の06Q2決算報告は、純損失3億3900万ドルで過去最大の赤字。原因となったパネル価格の下落を受け、設備投資計画を縮小する方針が明らかにされている。しかし同社は一方で、東芝からの出資を受けて製造拠点(ポーランド)の増強を行うなど、TVブランドとして5位までに入るPhilipsとLGEを介して欧州への展開を強化する。また、中小型LCDに特化したApplication Business Division(応用ビジネス事業部)を新設しており、10型以下(中小型)の規模拡大を狙う。

大手液晶メーカで明確に事業コア単体の決算を見ることは難しいが、同社の決算は同じ韓国S−LCDのそれと共に、比較的正しくその市況を反映している。日本でこのニュースが注目されるのは、LCDパネル製造装置、原材料、光学フィルム材料、専用ICなど、周辺産業で世界シェアの大きな部分をこの国が占めるからである。しかし、ここのところの海外と国内の設備投資の違いを見ると、経済の一部として自走する投資はコンシューマへ正しくフォーカスしたものだけだということを、あらためて教えられる。最新製造設備、大型TV、新型パネル、大型投資、実体の無い何物をも世界は消費したりはしない。そのような産業に依存しきっている日本は、世界市場の一員としてはあまりにも小さい。

LCDパネルの生産面積規模では、LGPLとS-LCDの2社が抜きん出ている。台湾AUOと台湾CMO、シャープの3社が2位グループでその半分程度の規模を持つ。液晶TV用として見ると、LGPL、S-LCD、液晶TVに特化するシャープ、この3社が並ぶ。3社はいずれも月産10万シート弱まで狙える6−8Gラインを複数持つ(07予定含む)。7Gラインを持つAUO、CMOは07年いずれも次世代ラインへの投資を凍結、国内他メーカとの再編に乗り出している。CMOは液晶TVでもトップグループに比肩する面積規模を持つ。IPSアルファについては、本体3社(日立、東芝、松下)の薄型TV戦略が、外部調達やPDPと共存させあくまで弾性を優先するものに変わってきた。07年6月に合併するとみられる中国3社(BOE、SVA、LOE)はそのままの再建は難しく、転換点を迎える。


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BOE-HYDIS:屋外での視認性を改善したTFTLCDを開発    2006(#20)


2002年、過剰債務に陥っていた韓国ハイニクスは、債権団による米マイクロンへの売却同意案を否決して独自再建の道を選んだ。その年すぐにハイニクスはLCD部門を中国BOEへ売却、全額を半導体部門の運営資金に充当した。その後もメモリ分野以外を次々に売却するなど資源をメモリ事業に集中して黒字に転換、2004年には過去最高益も更新しその再建は軌道に載った。韓国登記のBOE HYDIS(BOEの100%子会社となったハイニクスLCD部門)はそのツケを背負って誕生したことになるが、やはり3年連続で赤字を計上、06年上半期も136億円の営業損失を出した。しかしBOEは一貫して資金投下を行わず、逆に、実質的には韓国の技術集団であるBOE HYDISに対し知的財産権の譲渡を要求している。背景には、BOEが04年に設立したTFTLCD製造子会社北京BOEオプトエレクトロニクス(総投資1500億円のうち6割はシンジケートローン、残り600億円の75%をBOEが出資)がある。朝鮮日報によれば、BOEは北京BOEオプトエレクトロニクスの生産を早期に立ち上げるため、BOE HYDISの従業員を百人単位で引き抜いている。資金と中核人材を失い慣性で航行していたBOE HYDISであったが、2006年10月、親会社のBOEによってソウル中央地方法院に法廷管理を申請された。
標記BOE HYDISのニュースは、法廷管理人および調査委員による1次関係者会議が開催される1日前、2007年1月18日のものである。ポイントは内部反射層のアレンジによる反射率の向上(従来比300%)とされているが詳細は不明。AFFSなど既存技術も盛り込んでいる。


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TMD:5型モノクロTFT液晶ディスプレイを開発,量産を開始    2006(#16)


発表では電子辞書向けとされている。1990年ごろ煙のように忽然と消えてしまったキヤノン強誘電以来、細々と特定用途向けに設計されているテキストオリエンテッドな目的型情報ディスプレイ (*1)。この十数年、電子ペーパ、HMDなど「ハードウエア」な呼び名に足をすくわれた感もあったが、今度こそエンターテイメント用ディスプレイとの明確な分かれ道を見つけることができるかどうか注目である。生き残ろうとする中小ディスプレイメーカは、技術としての人間工学に正しく取り組み、次世代の表示技術を人との接点に求める。






*1)
目的の情報を得る過程で新たな分岐を作らないというコンセプト。音声ナビゲーションなども同じスタンスである。


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