--- 踊場第三高校ハイキング部は昼休み ---


「できた?」
「おう」

象潟のひかりのどけき春の日に
かどによこたう阿賀野川


「象潟の阿賀野川さん通りの角で死んでしもたがな」
「あわてんな」

阿賀野川ふりさけみればガスが鳴る
雲隠れにし出でし月かも


「なるほど。天の川続きやね」
「天の原だろ」
「阿賀野川さん生き返ったけど屁が臭うて月が引っ込んだっちゅうことかいな」
「なんかそこはかとなく香りますな」
「そこは言わないからこそ奥床しう思いやられ給うんじゃねえか」
「こら失礼」
「それよりおまえはどうなんだよ」
「できてまっせえ」

♥♥ビデオあっとおどろくためごろう
たった2巻で夜も休まず


「あおまえ。次オレにまわせよな」

原油高買わず飛び込む薪の風呂

神棚を集めて燃やし裏の川


「ってそのドヤ顔近づけんなよ」
「素直にほめてくれてええねんで」
「えーい、ツンツンすんなっつうの」
「まだあるやん。もったいぶらんと見せてえな」

われときて遊べやおやのないすずめ
あるじなしとて春なわすれそ

きりぎりす負けるな一茶ここにあり


「ん?違和感ないやん」

おおえやま生野の道の遠ければ
往きも還りも逢坂の関


「意味通じてんのとちがう?」
「そうかあ?」
「"生野"と"往き"なんて涙もんやぞ」
「うーん、そう言えば..」
「冬は敦賀まわり舞鶴経由やったんや」
「にしても生野の山ん中まで何しに行くんだろな」
「..えーと、僕もまたできたでえ」

田子ノ浦ゆうち出てみれば白たへの
衣干すてふ天の香久山


「いやそんな遠くからは見えねえだろ」
「そこは心眼や。先生も言うてはったやろ」

もろともにあわれとぞ思え八重桜
今日九重ににほひぬるかな


「お、これはまさか...」
「そや"数字でキュー"の術や」
「これやたら使うヤツっているよな」
「とくにジジババな」





「そろそろ授業始まんじゃねえの」
「ほなそれで今日は手仕舞いっちゅうことで」

さかな屋で芭蕉とばったりブリとカニ


「あんた天才やな」
「フッ、おまえもな」